―80年代に出た「ハイコンプリートモデル」と「HCM-Pro(ハイコンプリートモデル“プログレッシブ”)」の関連性はどうでしょう?この2つの間は時間的にかなり空いていて、その間にはMS in Pocketやマイクロガンダムなどありましたよね。こういう物があってのHCM-Proなのかと思ったのですが。 |
松岡さん:
ハイコンプリートモデルは、当時、”ホビー事業部のプラモデルの技術を注ぎ込んで作った完成品モデルはこういうものです“という商品でした。 |
| HCM-Proは「プログレッシブ(=進化)」という名前をつけさせて頂いています。時間が経った今、そのハイコンプリートモデルを今の技術で作ったらこの形になります、というご提案なんです。 |
| スケールが違うのはさっきお話した「集めやすいサイズってどういうサイズなの?」っていう部分から来ているものなので、このサイズでは精密感とか本物感などが入りきれない、となったらまたサイズを考えるかも知れませんが。 |
―HCM-Proでは金属パーツを使っていないですよね?昔のプラモデルは関節の所が良く折れたりしていましたから、ハイコンプリートモデルでは金属だったんですよね。 |
松岡さん:
中々鋭い質問ですね〜。ゆくゆくはハイコンプリートモデルでやったように金属パーツなどもチャレンジしてみたいですね。私も勉強の為にと思って、模型屋さんで見つけて、ハイコンプリートモデルのZガンダムを買いました。あの「伝説」の。やっぱり伝説でした(笑)。その時にその裏の表記を見て、ちょっとびっくりしました。すごい商品だなって(笑)。 |
松岡さん:
遊ぶ能力もある程度必要とする、当時とすれば画期的な商品だったと思います。そんな、当時としては突き詰めたスペックであるが故に、今でもまだこのハイコンプリートモデルのファンの方が居て下さるんだなって感じています。 |
| HCM-Proが出た事で、ハイコンプリートモデルは前のモデルだと見られちゃうんですが、このプロトタイプのハイコンも大事に思ってくださるファンの方がいらっしゃるというのは、当時妥協せずに作った部分がお客様の心を捉えてるのかな、という風に感じます。 |
―HCM-Proのシリーズを立ち上げる時には、何か技術的な進歩や切っ掛けがあったのですか? |
松岡さん:
明確にはないんですが、金型の成型技術が上がったという事だと思います。そのひとつは成型の肉厚です。通常1.2〜1.5ミリぐらいなんです。当然大きくなればなるほど、強度を取るために肉厚が必要になるんですけど、HCM-Proは小さいから例えば「外部装甲・内部フレーム・外部装甲」という風に、隙間がなくなってきちゃうんです。 |
| そうなると、平均の肉厚が0.8ミリとか部分的にはもっと薄くと、追い込んでいかなきゃならないんですよね。そうしたときに、高い精度で誤差無く量産する事ができる技術が何となく見えて来たことです。あとはABS・PVC・POMという風に色々な素材を使って、強度もちゃんと考えられるようになってきたので、じゃあ作ろうという事になったんです。 |
| もちろん先ほどお話させていただいた、市場全体の完成品への要望がコレクションブームを背景に、特にガンダムでは大きく変化した、と言うのも大きな要因です。 |
―そういえば、HCM-proの父!という方はいらっしゃるんですよね?どのような方なんですか? |
松岡さん:
HCM-Proシリーズを立ち上げたのは筒井という者です。3年前ですね。その後引き継いだのは鶴田で、そのあと私が引き継いでいます。3代目です(笑)。 |
―HCM-proの立ち上げの時の逸話などがあったら教えてください。 |
松岡さん:
他のガンダム商品と差別化するのに一番苦労したと聞いています。立ち上げ当時、雑誌に、あえてスケールを謳わずに写真だけ記事として載せてもらって、その時の評判が「これは1/100だろう」「1/144だろう」というものでした。その意見を聞いたときに、「あ、これやってもいいかもね」ということになって、商品のコピーとして使われている「スケールを超えた精密感」が達成出来たと感じたと言ってました。 |
| そのあと上司に値段が高いだのなんだのこてんぱんに言われながら…発売までかなり苦しんだとかも聞きましたが…、私は、配属前だったので、そのあたりはあんまり関係ない…かな〜と…。 |
| という感じで、開発にGOがかかって、4点同時発売を迎えるわけですが、この頃私は別のチームにいて、出荷指示書いてました(笑)。 あと、お店にサンプルをもっていって飾ったり…。可動することをどうやったらお客様に伝えられるかいろいろ考えてました。最初にガンダムだけ出してもシリーズとして認識してもらえない、ということで4点同時発売でしたね。 |
―HCM-proが実際に売り出されて、当初では思ってもみなかった事はありますか? |
松岡さん:
思っても見なかった事ですか…ジャブローセットですかね…。カラーリングとか…単品のセットとの色の違いは結構話し合いを重ねた感じですね。確かHCM−Pro初だったんじゃないですか。同時発売して、若干色味が違う仕様っていうのは。 |
―それはなぜそうしたんですか?差別化ですか? |
松岡さん:
差別化と同時に、単品で買うお客様とセットで買うお客様では、当然セットで買う方のほうが今までと違うものを欲しいと思われるお客様だろうと思って、ちょっとMSV的な色を入れたものを作ったんです。 |
| セットで買われる方は、箱から出さないだろうなと…。(笑)。だから、箱の中で迫力あるものをと思ってたら、みんな遊んでくださって、その様子をネットにどーんと上げたりして楽しんでくださってたんで、「あ、開けて遊んでくださるんだ!!」って(笑)。企画としては、うれしいような、予測が外れたようなで複雑でしたね。あとはシンプルな理由なんですけど、洞窟の中に入っていれば黒いだろうって。(笑) |
| 元々HCM-Proっていうのは色を決めるときに結構悩む事が多いんですよ。サザビーの赤とか。プラモデルだったら面の強さや押し出しで、ある程度軽い色や設定どおりの色でも馴染むんですけど、HCM-Proを設定どおりの色で作っちゃうと、ものすごく軽くなっちゃうんですよね。 |
| スケールトイのスケールの部分が抜けていってしまうんで、色はワントーン落としたりして、見た目に重みを出しているんですよね。そこはちょっと苦労していて、それを加速させようとしたのが、マークまで入れたジャブローセットだったんです。 |
―最初から独自のパネルラインやマーキングが付いていたのは、単色だと安っぽく見えてしまうからですか? |
松岡さん:
新しい表現をしたかったからですね。「プログレッシブ」の始まりですよね。スケールを超えた精密感はパネルラインなしでも再現しているのですが、更に密度感を高めるならば、パネルラインという手法だろうと。まあ、当然MSの密度が高くなれば逆にくどいものになっちゃうんで、今度はだんだん減ってくるという形なんですけどね。 |
| 最初のモビルスーツである1年戦争のMSは、形状がいわゆる「単純曲線」「単純曲面」で構成されています。でもサザビーなどはモビルスーツ自体が複雑で、そこにパネルラインの密度を高く入れてしまうと、混み混みになってしまいます。ですので、若干パネルラインは削っています。あとは、ポイントでナンバーやマークが入っているのはかっこいいかな、というのはありますね。最初、パネルラインは細かったんですけど、最近は太く集中した感じになっています。 |
| このパネルラインの変化もハイコンの「プログレッシブ」な部分だと。はじめの4点からいろいろなところが進化して、「コレがHCM-Proだよね」ってお客様にわかっていただければとてもうれしいですよね。 |
―コレクターの方々遊び方は、初めから予想していらっしゃった通りでしたか? |
松岡さん:
HCM-Proを熱烈に支持して下さっているお客様は、我々が思っていたように本当に色々なポーズをとらせて、写真を撮って、自分のHPやサイトに上げたりして下さっているなあ、という感じです。 |
| あまりポーズを取らせないようなコレクターの方もいらっしゃると思うんですが、逆にそういう方は箱のデザインを気に入って下さっているようです。箱はDVDのジャケットと同じサイズなんですが、幅が違っても高さは全部そろっているので、それを本棚にずらっと並べられる。それは個人のコレクションの仕方なんですが、そういった形の私達が想定していた集め方・遊び方で結構遊んでくださっているなぁ…って。 |
| DVDの箱にした理由というのは、コレクションして出さないだろう、だから箱もきれいにしておこう、って。そしたらみんな遊び始めてくださって、あら…これは可動をちゃんとしなきゃな、困っちゃったな〜って(笑)。コレクションであるゆえの1/200であるし、コレクションし易い上でのDVDパッケージであるし…。 |
| 今後のハイコンプロの提案をする上で、色んなお客様に購入いただいているのは大変強みですよね。作る方はつらいんですけど…。 |
―でもユーザーさんは手を掛けた分だけ喜んでくれますよね。 |
松岡さん:
ユーザーさんのレベルが凄く高いです。大変ですけど、逆にやりがいはあります。ハイコンプリートモデルの時に「一部のユーザーしか買っちゃいけませんよ」みたいな注意表示があったじゃないですか。実はHCM-Proのスペックもそうなんですよね。知らない人が遊んだら壊れちゃうような細かい部分もあるので。 |
ただ、そういう意味でのクレームは現状だとないんです。
逆に、まだここまで出来るだろう?的なコメントをいただくこともあってバランス調整は、いつも苦労しています。多分、これからもバランスを取るのに苦労すると思います。 |